『青い煮凝り』エドワード・ゴーリー/おすすめ本!あらすじ感想

目次

あらすじ

ゴーリーのオペラへの愛が
凝縮された悲劇的物語。
歌姫カヴィッリアと、
その狂信的なファンである
孤独な男ジャスパーの運命はいかに。
細密な線画で表現された
ダークなゴーリーの真骨頂。
(ソース:Amazon)

✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・

(こちらのあらすじは
ネタバレを含みます。
ご注意を。)
無名のオペラ歌手、
カヴィッリア。
彼女の狂信的ファンの男、ジャスパー。

彼女の邪魔者は
不吉な死により
次々と消えていく。

やがて彼女は名声を掴み、
歌姫プリマドンナへと
上り詰めてゆくのだった。
対照的にジャスパーは
どんどんと落ちぶれてゆく……。

二人の運命はいかに__。

感想

薄闇に潜むような絵本だった。
ページを捲るたび、
氷のような静かな狂気がこぼれ落ちた。

ゴーリーの描くモノクロームの世界は
古びた古城のように
細部まで緻密であり
余白には死がゆらめいていた。

そもそもこの本と出会ったのは
エドワード・ゴーリー特集をしていた
近所の書店である。
黒に青が映える、
ひときわ美しいこの本の表紙に
吸い寄せられてしまったのだ。
青の質感が素晴らしい……。

よく見ると歌姫が掲げている盆には、
何故か煮凝りが載っていて、
その中に男の首があるではないか!
「ひいぃぃぃっ!!」と
胸がざわついた。
声に出てしまったかもしれないと、
思わずキョロキョロしてしまったのを覚えている。

淡々と綴られる簡素な文章と
仄暗い絵の美しさが
絶妙に交錯し、
独特の芸術的世界観が
異彩を放つ本だった。

わたしは一瞬にして心を奪われた。
ゴーリーの人気の高さに頷いてしまう。

ちなみに原題の
『The Blue Aspic』のアスピックとは、
フランスの料理名であり、
ゼラチンで固めた透明なジュレの中に、
肉や魚、野菜、卵などの具材を
美しく閉じ込めた料理のことらしい。

タイトルの『青い煮凝り』と
この物語の関連性は謎であるが
解き明かされない秘密があるのもまた
良いかもしれない。
読む者それぞれの妄想力が、
遺憾無く発揮されることだろう。

かくゆう私も、
タイトルもそうだが、
華麗なる歌姫と
哀れな男ジャスパーの関係について、
本当は、ただのファンとプリマドンナの関係ではないのではないか?
などと妄想が止まらない。

そして読了後には、
心に冷たいスープを流し込んだような
強烈な余韻が胸を刺した。

影がじっと居座り
仮面を被った絶望が
柔らかく微笑みながら
こちらを見つめているようだった__。

それは何も語らない。
けれど胸の奥にぽたりと落ちる
暗く青いしずく__。

ずっと考えてしまう。
ずっと考えていた。
そして__
忘れられない1冊となったのである。

✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・

よろしければ
あなたも是非
この大人の絵本を
手に取ってみてくださいね。

素晴らしい
読書の時間を
お過ごしください。

おしまい。

著者紹介

エドワード・ゴーリー
(Edward Gorey,
1925年2月22日 – 2000年4月15日)は、
アメリカの絵本作家。
本名はエドワード・セントジョン・ゴーリー(Edward St.John Gorey)。
エドワード・ゴーリー
Edward Gorey

誕生
1925年2月22日
アメリカ合衆国 イリノイ州 シカゴ

死没
2000年4月15日(75歳没)
アメリカ合衆国 マサチューセッツ州

職業
絵本作家
ジャンル、絵本

主な受賞歴
トニー賞
ドイツ児童図書賞

絵本という体裁でありながら、
道徳や倫理観を冷徹に押しやった
ナンセンスな、あるいは残酷で
不条理に満ちた世界観と、
徹底して韻を踏んだ言語表現で
醸し出される深い寓意性、
そしてごく細い線で
執拗に描かれたモノクロームの質感の
イラストにおける高い芸術性が、
「大人のための絵本」として
世界各国で熱心な称賛と支持を受けている。

また、幻想的な作風と
アナグラムを用いたペンネームを
幾つも使い分けて
私家版を出版したことから、
多くの熱狂的なファン・コレクターを
生み出している。

1946年、兵役を終え
ハーバード大学に入学

1950年、ハーバード大学を卒業。
メリル・ムーアの詩集
『不規則なソネット』(Illegimate Sonnets)の
見返しにイラストを描き、
これが最初の商業出版となる。

1972年、最初のアンソロジー本
『アンフィゴーリー』(Amphigorey)が
出版され、
ニューヨーク・タイムズ・ブックレビューの
「今年度最も注目すべき美術書の5冊」に
選ばれた他、
「ベスト・デザイン・ブック15」として、
アメリカン・インスティテュート・
オブ・グラフィックアーツ賞を受賞。

1973年、ナンタケットの
サイラス・ピアース劇場の公演
『ドラキュラ』のセットと衣裳デザインを担当。
1974年、最初の回顧展
『ファンタスマゴリー』展が
エール大学図書館にて開かれる。
1977年、ブロードウェイで舞台劇
『ドラキュラ』公演。
1978年、『ドラキュラ』で
トニー賞の衣装デザイン賞を受賞するも、
授賞式を欠席する。
2000年4月15日、
マサチューセッツ州の病院にて
心臓発作で死去。75歳。

生涯独身を通した。
また、子供の頃から猫好きで、
軍隊生活以外では
常に猫と共に生活していたという。

(ソース:ウィキペディア)

柴田 元幸(しばた・もとゆき)訳
1954年東京都生まれ。
翻訳家、東京大学名誉教授。
P・オースター、
S・ミルハウザーをはじめ
現代アメリカ小説の翻訳多数。
著書に、『生半(半=旧字)可な學者』
(講談社エッセイ賞)など。
(ソース:Amazon)

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