感想
いやぁ〜秋だ。
庭のイヌマキの木に実が生った。
紅茶タイムのお供にすべしと
マジックハンドを両手に持ち
ガチャガチャと
さながらバルタン星人のごとく
収穫に奮闘するワタクシ。
ご近所の方に、
このバルタン星人の姿を
見られないことを祈るばかりだ。
今回ご紹介させて頂く1冊は
小津夜景さんの
『いつかたこぶねになる日
〜漢詩の手帖』というエッセイです。
南仏ニース在住の俳人である、
小津夜景さんが綴る
漢詩と日々の暮らし。
……ちょっと待って
その前に、タコ⁉︎
タコが気になる(笑)
「たこぶね」という種類のタコは
地中海の宮殿のような貝殻を
住まいにしているらしい。
その貝は子供のための揺籠であり
母のたこぶねはこれを抱えて
海に浮かび上がり
子供が孵って泳ぎ去ると
母のたこぶねは貝を捨てて
新しい生活を始めるそうだ。
ふむ……、なんとも潔いではないか!
一匹で未知の海に向かって旅立つのだ。
ただ一匹静かに漂い
時と共にある自由__。
生き方を象徴しているかのようだ。
まるで小津さんの豊かな訳による
漢詩の世界のようだ。
それにしても漢詩とは
何だか高尚なイメージで
ハードルが高いと
勝手に思っていたのだが
杞憂に過ぎなかった。
彼女の言葉に導かれ
過去と現在が溶け合うように
古の詩人たちの感情と
響き合うことができる。
小津さんの視線を通した世界が
まるでさざ波のように
ゆっくり心に広がっていく。
そして小さな詩篇の一部となり
心豊かな時間に
揺れることができるのだ。
また、彼女の言葉は
鋭い三日月のように容赦なく
真理のベールを剥ぎ取る。
“それきりは、日々のまんなかを
流れる川だ。
生きていれば別れがあるし、
もっとありのままにいえば
この世界では
うしなわれるものだけが
目のまえにあらわれる。
(本文より)“
ハッとした。
そして思う__。
だからこそ美しいのだ
だからこそ尊いのだと……。
テレビをつけると
80代からIT関連の趣味を
始めたという方たちが映っていた。
「歳を重ねると
失われてゆくものは多いけれど
こうして新しいことに出会うと
世界がどんどん広がって
とても楽しいです。」
そう生き生きした表情で
話している。
そうか__
人や物、能力など
あらゆるものが
失われてゆくのかもしれないが
どんどん新しく出会うこともできる。
密やかな孤独の輝きを
堪能しながら
新しい世界も広がってゆくと良い__。
わたしの得意技のご都合主義で、
無理矢理折り合いをつけて
本を閉じた。
日常の何気ない瞬間に息づく、
静かな美しさが
前よりも鮮やかに生き生きと
浮き彫りになっていることを
心地良く感じながら……。
✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・
よろしければ
あなたも是非
この本を
手に取ってみてくださいね。
素晴らしい
読書の時間を
お過ごしください。
おしまい。
「Audible (オーディブル)」は
Amazonが提供する「書籍を朗読した音声」の配信サービス
(Amazonが提供する聞く読書、オーディブル。オーディブルはラジオ感覚で聞けてとっても便利です。
私は家事をしながら聞いています。今ではすっかり家事の時間が楽しみに変わりました。おすすめです!)
内容紹介
世界を愛することと、
世界から解放されること――
詩はこのふたつの矛盾した願いを
叶えてくれる。
南仏・ニース在住の俳人である著者は、
海を空を眺めながら
古今東西の先人たちの詩(うた)を
日々の暮らしに織り交ぜて、
新たなイメージの扉を
しなやかにひらく……。
杜甫、白居易、夏目漱石、徐志摩らの
漢詩を優しく手繰り寄せて翻訳し、
いつもの風景に
あざやかな色彩を与える、
全31編のエッセイ集。
(ソース:新潮社)
著者紹介
小津夜景
オヅ・ヤケイ
1973(昭和48)年、
北海道生れ。
2000(平成12)年より
フランス在住。
2013年「出アバラヤ記」で
攝津幸彦記念賞準賞、
2017年句集
『フラワーズ・カンフー』で
田中裕明賞を受賞。
その他、
句集『花と夜盗』、
エッセイ集
『カモメの日の読書漢詩と暮らす』、
ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者・
須藤岳史との共著
『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』
などがある。
(ソース:新潮社)