
あらすじ
会って話したのでは
伝えようもない心の傷。
14通の手紙が、それを書き尽くした。
「前略 蔵王のダリア園から、
ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、
まさかあなたと再会するなんて、
本当に想像すら出来ないことでした」
運命的な事件ゆえ
愛しながらも離婚した二人が、
紅葉に染まる蔵王で
十年の歳月を隔て再会した。
そして、女は男に宛てて
一通の手紙を書き綴る――。
往復書簡が、
それぞれの孤独を生きてきた
男女の過去を埋め織りなす、
愛と再生のロマン。
(ソース:新潮社)
感想
『錦繍』と言えば秋。
今は春。
そう、秋まで待てなかったのだ。
おかげで“花見団子を食べながら
『錦繍』を読む“という、
妙ちきりんなスタイルで
この良作を味わった。
✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・
かつて愛し合っていたけれど
ある事件をきっかけに離婚した元夫婦が
偶然に再会し、
手紙のやり取りが始まる。
時を経ても消えぬ痛み、
孤独と共に生きてきた男女の
再生の物語である。
喪われた日々が、
手紙という静かな糸で
綴られていく、
全編書簡体の小説だ。
✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・
まぁ、とにもかくにも
日本語が美しく、
うっとりとしてしまう。
美しい日本語には力があるようだ。
あっという間に心を
捉えられてしまった。
不倫、無理心中、離婚と、
どろどろした内容があっても、
どこかしら美しさと品が
漂っているのだ。
それもやはり、
美しい言葉のなせる技かもしれない。
また、本作は手紙という形式を
用いることで、
登場人物たちの内面を
深く堀下げている。
ヒロインの亜紀が
“赦す“ことにより再生してゆき、
有馬もまた“赦し“のようなものを
頼りに光を得てゆく。
その繊細な心理描写は、
まるでしっとりとした鎮魂歌が
胸に響き渡るように
ゆっくりと心に沁みた。
赦すということは
とてつもなく偉大だ。
何よりそれによって
自分自身が解放され
救われてゆくのだ。
血の底を這うような、
真っ暗だった場所に
ひとすじの光が
射しこむように__。
この作品を
包んでいるものは、
大きな声では語られない、
人生のほとりに咲く
“希望“の気配のようなものかもしれない。
前半は退廃的で
救いがない心持ちであったが、
読み終えた後は、
温かな感動と深い余韻に
心が満たされる。
『錦繍』それは
人生という名の織物。
喜び、悲しみ、愛、憎しみ、
様々な色が織り込まれた
その織物は、
時に美しく、時に痛々しく
心を揺さぶる。
そしていつまでも
色褪せることなく
輝き続けるだろう__。
さて、
秋の紅葉ロマンスを
たっぷり堪能したわたしであったが、
食い気には勝てない。
花見団子は美味しすぎた。
もう1本食べちゃおうかな?
秋になったり、春になったり、
忙しいわたしの1日であった。
✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・
よろしければ
あなたも是非
この本を
手に取ってみてくださいね。
素晴らしい
読書の時間を
お過ごしください。
おしまい。
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今ではすっかり家事の時間が
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著者紹介
宮本輝
ミヤモト・テル
1947(昭和22)年、
兵庫県神戸市生れ。
追手門学院大学文学部卒業。
広告代理店勤務等を経て、
1977年「泥の河」で
太宰治賞を、
翌年「螢川」で芥川賞を受賞。
その後、結核のため2年ほどの
療養生活を送るが、
回復後、旺盛な執筆活動をすすめる。
『道頓堀川』『錦繍』『青が散る』『流転の海』
『優駿』(吉川英治文学賞)
『約束の冬』(芸術選奨文部科学大臣賞)
『にぎやかな天地』
『骸骨ビルの庭』(司馬遼太郎賞)
『水のかたち』『田園発 港行き自転車』
等著書多数。
2010 (平成22)年、
紫綬褒章受章。
2018年、37年の時を経て
「流転の海」シリーズ
全九部(毎日芸術賞)を
完結させた。
(ソース:新潮社)