
①『透明な夜の香り』
②『赤い月の香り』
③『燻る骨の香り』
このシリーズは、
やはり順番通りに
読むことを
おすすめします。
が!
『シリーズだから』と
身構えなくても大丈夫。
始まりの
『透明な夜の香り』
この1冊だけでも、
読書の満足感は
きっちり受け取れます。
長編に尻込みする
わたしが言うのですから、
多少の説得力は
あるはずです。
・『透明な夜の香り』あらすじ
仕事を辞め、心を閉ざしていた
元書店員の一香は、
古い洋館で家事手伝いの
アルバイトを始める。
そこに暮らしていたのは、
人並み外れた嗅覚を持つ
天才調香師
小川朔(おがわ さく)
彼は依頼人の記憶や
秘密さえも「香り」として
感じ取り、その人だけの
特別な香りを作り出していた。
一香のもとにも、
さまざまな事情を抱えた
依頼人が訪れる。
不思議な香りに包まれた洋館で
働くうち、一香は、
卓越した才能の裏側にある
朔の孤独にも
気づいていく――。
香りを手がかりに、
人の記憶や秘密、
心の奥にそっと
触れていく物語です。
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・『赤い月の香り』あらすじ
カフェでアルバイトをしていた
朝倉満は、ある日、
客として訪れた天才調香師
小川朔(おがわ さく)から
声をかけられる。
人並み外れた嗅覚を持つ朔は、
古い洋館で、依頼人の望む香りを
オーダーメイドで作っていた。
朔のもとには、
忘れられない人の香り、
失いたくないものの香りなど、
さまざまな「執着」を抱えた人々が
訪れる。
満はそこで働きながら、
依頼人たちの欲望と、
それを香りへと変えていく
朔の仕事に触れていく。
そして、朔が満を
この洋館へ誘った本当の理由が、
少しずつ明らかになっていく――。
香りを通して、
人の心の奥に潜む欲望や
執着を描いた、
『透明な夜の香り』に
続く物語です。
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・『燻る骨の香り』あらすじ
京都で江戸時代から続く
香老舗「瑞雲堂」。
その社長の娘・真奈には、
香りを見抜く
類まれな才能を持つ妹
丹穂(にお)がいた。
しかし、丹穂(にお)は
若くして亡くなってしまう。
そして、彼女を
荼毘に付したとき、
あり得ないはずの香りが
あたりを満たす。
それは、最高級の沈香
「伽羅」の香りだった。
葬儀から数か月後、
真奈の前に現れたのは、
「伽羅の骨」を探す男・新城と、
亡き丹穂との約束を
果たすために京都を訪れたという
若き調香師、
小川朔(おがわ さく)
なぜ、丹穂の骨から
伽羅の香りがしたのか。
そして、丹穂と朔の間には、
どんな約束があったのか――。
『透明な夜の香り』
『赤い月の香り』へとつながる、
小川朔がまだ
二十代だった頃の物語。
香りをめぐる謎と、
そこに絡み合う人々の
記憶や執着を描いた、
「香り」シリーズの
完結編です。
香り三部作(香りシリーズ) 感想
香りの小説を3冊も読んだら、
さぞかし鼻が
利くようになるかと思いきや、
残念ながら、
わたしの嗅覚に
目立った進歩は
ありませんでした。
けれど、
心の奥に残る
香りについては、
少しわかるように
なった気がします。
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香りに癒され、
物語に惹き込まれる。
そんな、大満足の
香りシリーズでした。
3冊を読み終えてからも、
しばらくのあいだ
この物語の香りが
わたしの中に残っていました。
静かで、美しくて、
どこか危うい。
人の心の奥にひっそりと潜む
執着や孤独、
記憶や痛み。
それらが「香り」という
目には見えないものによって、
そっと浮かび上がってくる
物語でした。
森を抜けた先に佇む
古い洋館。
ハーブや花が植えられた庭。
そこに暮らすのは、
人並み外れた嗅覚を持つ
天才調香師、
小川朔(おがわ さく)。
朔のもとには、
香りを求めて
さまざまな人が訪れます。
けれど、
彼らが本当に求めているのは
香りそのものではありません。
忘れられない誰かだったり、
失ってしまった時間だったり、
自分でも気づいていない
心の奥にあるものだったりする。
時にぞっとするほど鋭い嗅覚で、
朔は人や物に残された
さまざまな香りを感じ取ります。
そして朔の周りに集まる人々の
記憶や欲望、執着が、
少しずつ香りとなって
立ち上がってくる。
ミステリーのような
緊張感があり、
時に妖しく、
けれど決して派手ではない。
静かな物語の中に、
人間の欲望や執着が
ひっそりと息づいていました。
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そして、
3冊を読み終えて
感じたこと。
香りは、
遠い記憶の扉を
音もなく開ける
鍵そのもの
なのかもしれない。
人にも、物にも、
場所にも、記憶にも、
それぞれ固有の香りがある。
その人と過ごした時間が
香りになって残ることもある。
もう会えない人のことを
ふいに思い出す香りもある。
忘れたと思っていた記憶が、
ある香りによって
突然よみがえることもある。
だから、
香りとは記憶の鍵
そのものなのかもしれません。
ページをめくりながら
わたしは何度も、
自分の中にも
そんな「香り」が
あるのだろうか。
そんなことを
考えていました。
そして3冊を読み終えた今、
あの洋館も、
あの庭も、
そこに漂う花やハーブの香りも、
もう物語の中だけのものではなく、
わたしの記憶のどこかに
ひっそりと残っているような
気がします。
静かな森の奥で
風がそっと吹き抜け、
花の香りが
かすかに揺れる。
その向こうに
あの洋館が見える。
そんな光景を
思い浮かべながら、
わたしはこの物語を
閉じました。
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もしあなたが、
静かで美しく、
そして少しだけ
危うい物語がお好きなら、
ぜひこの
香り三部作を
ゆっくりと読んでみてください。
ページをめくるたび、
あなた自身の
記憶の中に眠る「香り」まで、
そっと立ち上がってくるかも
しれません。
素敵な読書の時間を
お過ごしください。
著者紹介
千早茜(ちはや あかね)
1979年、北海道生まれ。
立命館大学文学部卒業。
2008年『魚神』で
小説すばる新人賞を
受賞し、作家デビュー。
同作で泉鏡花文学賞も受賞。
2021年には
『透明な夜の香り』で
渡辺淳一文学賞、
2023年には『しろがねの葉』で
第168回直木賞を受賞。
人の心の奥にあるものを、
独特の感性と
美しい文章で描く作家です。
(集英社公式サイトを
参考にしています)