
あらすじ
_どうか、どうか、私。
これから先の人生、
他人を愛しすぎないように_。
他人を愛するぐらいなら、
自分自身を愛するように。
水無月(みなづき)の
堅く閉ざされた心に、
強引に踏み込んできた
小説家の創路(そうじ)。
調子がよくて甘ったれ、
依存たっぷりの創路を前に、
水無月の内側から
ある感情が湧き上がってくるー。
世界の一部にすぎないはずの恋が、
私のすべてを
しばりつけるのはどうして。
恋愛感情の極限を抉り出す、
戦慄のベストセラー小説。
直木賞作家の原点。
(ソース:Amazon)
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ここからのあらすじには
多少ネタバレが含まれますので
ご注意くださりませ。
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離婚後、翻訳の仕事をしながら
静かに暮らしていた
主人公・水無月(みなづき)は、
ある男性との
出会いをきっかけに、
少しずつ心を揺さぶられていく。
最初は穏やかに見えた関係だったはずが、
相手の曖味な態度や
複雑な人間関係に翻弄されるうち、彼女の心は次第に
執着へと変わっていく。
「愛したい」「愛されたい」という
誰もが抱く感情は、
ほんの少し歯車が狂うだけで、
人をここまで
追い詰めてしまうのかーー。
感想
『恋愛中毒』を読んで、その面白さに
まんまと読書中毒に
なってしまいました。
恋愛小説の顔をしていたのに、
ページを開いてみれば、
人間関係の危険物そのもの。
読んでいる感覚は、
もはや恋愛小説というより、
上質な心理サスペンスでした。
人の心が少しずつゆがみ、
執着が静かに狂気へと姿を変えていく。
その過程があまりにも自然なのです。
「次はどうなるんだろう」
怖いもの見たさで、
ページをめくる手が
止まりませんでした。
人の心の危うさと
静かな狂気に引き込まれ、
ゾクゾクするのに、とても面白い。
そんな読書体験でした。
恋愛を描きながら、
人間の心理をここまで深く、
そして恐ろしく描ける山本文緒さんは、
やはり天才です。
あらためて、そう感じました。
また、主人公の心のひずみは、
親から受けたねじれた愛情に
根を持っているようにも感じられました。
親からどのように愛されたか。
そのことが、主人公のその後の人生に
大きな影響を与えてしまったことを
考えると切なくなります。
そして、読み終えた今も
ひとつの問いが残っています。
彼女は本当に相手を
愛していたのでしょうか。
それとも、承認欲求を満たすために、
「愛」という形を
借りていただけだったのでしょうか。
その問いに、明確な答えはありません。
だからこそ、この物語は
読み終えてからも
心に居続けるのだと思います。
__それにしても。
どうやら山本文緒さんの小説は、
もれなく面白い。
もう、そう言うほかありません。
読書好きには、
「積読が減らない」という
幸せがあります。
そして私にはもうひとつ、
ちょっと特別な幸せがあります。
山本文緒さんの、
まだ読んでいない作品があることです。
新刊はもう増えない。
その事実は寂しいけれど、
私にはまだ
「初めて読む山本文緒さん」が
残っています。
まるで冷蔵庫の奥に、大好物をひとつだけ
隠しておいたような気分です。
「今日こそ食べようかな。」
「いや、もう少しだけ、
とっておこう。」
そんな、誰にも邪魔されない
贅沢な駆け引きを、
ひとりで楽しんでいます。
読み終えてしまえば、
未読作品はひとつ減ります。
でも、読まなければ
「楽しみ」はそのまま残っているのです。
なんとも都合のいい読者の理屈ですが、
それも読書の楽しみ方の
ひとつなのかもしれません。
読む日を心待ちにしながら、
もう少しだけ、
この幸せを味わっていたいと思います。
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著者紹介
山本 文緒
(やまもと ふみお、
1962年11月13日 –
2021年10月13日)
日本の女性小説家。
神奈川県横浜市生まれ。
神奈川大学経済学部卒業。
本名は大村暁美。
大学では落語研究会に所属。
卒業後、証券系の財団法人に勤め、
横浜の実家から毎日
満員電車で通うのがつらく、
会社のそばにアパートを借りるための
副業として少女小説を書き始める。1987年に『プレミアム・プールの日々』で
コバルト・ノベル大賞の佳作を
1回目の応募で受賞し、
少女小説家としてデビュー。
ペンネームの「山本」は
友人の名前に、
「文緒」は槇村さとるの
短編漫画の主人公の名前に由来し、
「中性さを出したかった」と語る。
1992年の『パイナップルの彼方』から一般文芸へシフトする。
作品のタイトルを、
少女小説では編集者に
決められることが多かったが、
一般文芸では
『ブルーもしくはブルー』を除き
自分で決めていた。
2002年に再婚。
2003年、40歳の時に
うつ病を発症し、
治療のため執筆活動を中断し、
約6年の闘病後、
エッセイ『再婚生活』で復帰する。
2011年に長野県北佐久郡
軽井沢町に移住。
2021年、
7年ぶりに執筆した小説
『自転しながら公転する』で
第27回島清恋愛文学賞、
第16回中央公論文芸賞を受賞。
2021年春頃より体調を崩し、
ステージ4bの膵臓癌と診断され
余命4か月の宣告を受けて
自宅療養を続け、
同年10月13日、
軽井沢の自宅で死去した。
58歳没。
(ソース:ウィキペディア)